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考察 (更新: )

「CO2排出量◯%削減」という発表、何を基準にした数字か

『CO2排出量を◯%削減』という発表は、基準年・算定範囲・絶対量か相対量かという前提次第で意味が変わります。木質バイオマス発電のカーボンニュートラル算定をめぐる論争を例に、実務者が確認すべきポイントを整理します。

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CO2削減率の発表における注意点

「CO2排出量を◯%削減」という発表は、バイオエコノミー関連のニュースでも頻繁に見かけます。しかし、この数字が何を基準に、何を含めて算定されているかは、発表文だけでは分からないことが少なくありません。木質バイオマス発電の「カーボンニュートラル」算定をめぐる論争を例に、CO2削減率の発表を読むときに確認すべきポイントを整理します。

「削減」という言葉に隠れる3つの前提

「CO2排出量を30%削減した」という発表は、次の3つの前提の組み合わせで成り立っています。

  1. 基準年:何年(何時点)と比較しているか
  2. 算定範囲:自社の直接排出(Scope1)だけか、購入電力由来の間接排出(Scope2)まで含むか、サプライチェーン全体(Scope3)まで含むか
  3. 算定ルール:どのような会計上の取り決めに基づいて排出量をゼロまたは削減とみなしているか

このうち特に見落とされやすいのが3番目の「算定ルール」です。会計上の取り決めによって、物理的には排出が発生していても、統計上はゼロとしてカウントされる場合があります。

実例:木質バイオマス発電の「カーボンニュートラル」算定

この構造が最も分かりやすく現れているのが、木質バイオマス発電の「カーボンニュートラル」という位置づけをめぐる論争です。

国際的な温室効果ガス算定ルール(IPCCガイドライン)では、バイオマスを燃焼した際に発生するCO2は、成長段階で樹木が大気中のCO2を吸収しているという前提から、燃焼時点での排出量を統計上ゼロとしてカウントする慣行があります。この会計上の取り決めにより、木質バイオマス発電は「CO2排出量ゼロ」の再生可能エネルギーとして扱われることがあります。

しかし、国際環境NGOのFoE Japanは、この算定方法に対して異論を示しています。燃料の栽培・加工・輸送を含むライフサイクル全体で見れば、実際には相当量のCO2が排出されており、特に燃料の生産段階で森林減少などの土地利用変化を伴う場合は、森林や土壌に蓄積されていた炭素が大気中に放出されるとの指摘です。WWFジャパンも同様に、バイオマス発電を機械的に「カーボンニュートラル」と扱うことに慎重な立場を示しています。

どちらの立場が「正しい」かを一方的に判定することが、この記事の目的ではありません。 重要なのは、「CO2排出量ゼロ」という表現が、燃焼時点のみを対象にした会計上の取り決めに基づく数字なのか、栽培・加工・輸送を含むライフサイクル全体の実測に基づく数字なのかで、まったく異なる主張になるという事実です。この論点は、木質バイオマスの燃料調達実態そのものを扱う木質バイオマス発電の矛盾とも関係します。

絶対量の削減か、相対量の削減か

もう一つ確認すべきなのが、削減が絶対量(排出量の総トン数そのものが減った)を指すのか、相対量(売上高あたり、生産量あたりなど、原単位あたりの排出量が減った)を指すのかという区別です。

生産量が増加していても、原単位あたりの排出量が減っていれば「削減」と表現できます。この場合、総排出量そのものは増加している可能性があります。「◯%削減」という数字を見たときは、それが総量の削減なのか、原単位の削減なのかを確認する必要があります。

同様に、基準年の選び方によっても数字の見え方は変わります。例えば、経済活動が一時的に落ち込んだ時期を基準年に選べば、その後の「回復」局面と比較したときの削減率は小さく見えます。逆に排出量が高かった時期を基準年に選べば、削減率は大きく見えます。基準年がいつなのか、なぜその年が選ばれているのかを確認することが、数字を読む出発点になります。

見分けるためのチェックポイント

CO2削減率の発表を読む際は、次の点を確認します。

1. 基準年が明記されているか 基準年が明示されていない、または基準年の選定理由が説明されていない発表は、削減率の大きさだけを見て判断しない方が安全です。

2. 絶対量か原単位(相対量)か 「総排出量」の削減なのか、「売上高あたり」「生産量あたり」の削減なのかを区別します。

3. 算定範囲(Scope1・2・3) 自社の直接排出のみか、購入電力を含むか、サプライチェーン全体を含むかによって、削減率の意味は大きく変わります。

4. 算定ルール上の前提 バイオマス燃焼のように、統計上ゼロとしてカウントされる会計上の取り決めが使われていないか。使われている場合、その前提に異論があるかどうかも確認します。

LCAに基づく発表との違い

似た文脈の記事に、LCA(ライフサイクルアセスメント)の主張、何を確認すればよいかがあります。両者は隣接するテーマですが、確認する対象が異なります。

この記事が扱うのは、企業が独自に発表するCO2削減率という数字そのものの基準年・算定範囲・算定ルールです。一方、LCAはより体系的な国際規格(ISO 14040・14044)に基づく評価手法であり、システム境界・機能単位という手法設計そのものが結果を左右します。CO2削減率の発表がLCAの結果を根拠にしている場合は、両記事のチェックポイントを組み合わせて読む必要があります。

まとめ

「CO2排出量を◯%削減」という発表は、基準年・算定範囲・絶対量か相対量か・算定ルール上の前提という要素の組み合わせで成り立っています。木質バイオマス発電の「カーボンニュートラル」算定をめぐる論争が示す通り、同じ物理的な実態について、会計上の前提の選び方だけで「排出量ゼロ」と「実質的に相当量を排出している」という正反対の主張が成り立つことがあります。発表を受け取る側は、数字の大小そのものより先に、その数字がどの前提に基づいているかを確認する必要があります。

参照資料

  • 国際環境NGO FoE Japan.「バイオマス発電は『カーボン・ニュートラル(炭素中立)』ではない」. foejapan.org
  • WWFジャパン.「バイオマス発電は本当にカーボンニュートラルとすべきか?」. wwf.or.jp
  • NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク.「バイオマス白書2022 バイオマスはカーボンニュートラルか?」. npobin.net
  • 消費者庁.「景品表示法(不当な表示の禁止)」(最新). caa.go.jp

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