bioeconomy.jp
考察

実務で役立つグリーンウォッシュ回避のステップ——法令・ガイドライン・実務の整理を分けて確認する

自社が環境訴求を発表する前に、何を確認しておくべきか。日本の景品表示法と環境省の環境表示ガイドライン、EUの2024/825指令を、法的な義務・ガイドライン・本記事の整理に分けて整理します。

バイオエコノミーの最新の動きは Xでも追っています →

グリーンウォッシュ回避の具体的ステップ

自社の製品や発表に「バイオ由来」「環境にやさしい」「CO2削減」と書こうとしたとき、何を確認すれば、誤解を招く表示を避けられるでしょうか。日本とEUでは、拘束力のあるルールと、望ましい姿を示すガイドラインが混在しています。本記事は、発信する側の視点で、それぞれが何を求めているのかを区別して整理します。法的な最終判断を示すものではありません。

まず、三つの層を分ける

読む側の視点(主張の型ごとに、最初に何を確認するか)は、環境訴求を見たら、まず何を確認するか——主張の型で選ぶ、確認の順番にまとめています。この記事は、発信する側の確認に絞ります。

環境表示のルールを調べると、性質の違う情報が混ざって出てきます。発表前の確認では、次の三つを分けておくと整理しやすくなります。

層例性質
法令景品表示法、EUの指令を各国が法制化したもの違反すると行政上の対応を受けうる
ガイドライン環境省「環境表示ガイドライン」望ましい表示のあり方。事業者の自主性を尊重する位置づけ
本記事の整理発表前の確認順bioeconomy.jpによる実務上の整理。法的助言ではない

ガイドラインに沿っていることは、直ちに適法であることを意味しません。反対に、ガイドラインの全項目を満たしていなくても、直ちに違法とも限りません。

日本:景品表示法と環境表示ガイドライン

景品表示法(優良誤認表示)

消費者庁の説明では、優良誤認表示とは、商品・サービスの品質や規格などの内容について、実際よりも著しく優良であると示す表示です。あわせて、競合他社のものより著しく優良であると示す表示も含まれます。

また、消費者庁が表示の裏付けとなる資料の提出を求めたとき、事業者は原則として求めた日から15日以内に提出する必要があります。提出がない場合や、資料が合理的な根拠と認められない場合は、措置命令との関係では不当表示とみなされます。課徴金納付命令との関係では、不当表示と推定されます(消費者庁Q&A)。

合理的な根拠と認められる条件は、消費者庁のQ&Aによると、次の二つです。

  • 提出資料が客観的に実証された内容であること
  • 表示された効果・性能と、資料で実証された内容が適切に対応していること

この制度が、環境に関する個々の表示にどこまで及ぶかは、表示の内容によって変わります。本記事では個別の当てはめは行いません。

なお、環境省のガイドラインは、景品表示法が対象とするのは「自己の供給する商品又は役務の取引」であり、株主に向けた広告や、商品・役務と関係のない企業広告は対象外だと説明しています。

環境省「環境表示ガイドライン」(令和8年3月改定)

環境省は、令和8年(2026年)3月にこのガイドラインを改定しました。主な対象は、自己宣言で環境表示をする事業者と事業者団体です。商品・サービスの取引に直接関わらない環境表示(事業活動、イメージ広告、企業姿勢など)も適用範囲に含めています。

ガイドラインは、次の五つを基本項目として挙げています。

  1. あいまいな表現や環境主張は行わないこと
  2. 環境主張の内容に説明文を付けること
  3. 製品のライフサイクル全体を考慮すること
  4. 環境主張の検証に必要なデータおよび評価方法が提供可能で、情報にアクセスが可能であること
  5. 製品または工程における比較主張はLCA評価、数値等により適切になされていること

使用を避けるべき表現の例として、「環境にやさしい」「地球にやさしい」「グリーン」「持続可能」などが挙げられています。単独で使わず、合理的な説明文を付けることが求められています。

あわせて、カーボンフットプリントやカーボン・オフセットの主張は、それぞれ別の指針(カーボンフットプリント表示ガイド、オフセット指針など)に従う必要があるとされています。マスバランス方式でバイオプラスチックなどを表示する場合にも、実際の配合率と一致しない特性があるため、製品特性に応じた適切な表示・コミュニケーションが必要だと書かれています。

EU:消費者のグリーン・トランジション強化指令

EUの指令2024/825(略称ECGT、EmpCoとも呼ばれます)は、不公正取引慣行指令(2005/29/EC)などを改正する指令です。加盟国は2026年3月27日までに国内法化し、2026年9月27日から適用すると定めています。各国の国内法化の状況は、本記事では確認していません。

不公正な取引慣行の禁止リスト(附属書I)に、次の項目が加わりました。2026年9月27日から適用が始まっています(2026年10月初旬時点。各国の国内法化の状況は未確認です)。

  • サステナビリティ・ラベル(2a):認証制度に基づくものでも、公的機関が設けたものでもない、自社独自などのラベルの表示
  • 汎用的な環境主張(4a):認められた優れた環境性能(recognised excellent environmental performance)を示せないまま行う、汎用的な主張
  • 全体への主張(4b):製品の一側面、または事業の特定の活動にしか当てはまらないのに、製品全体や事業全体について行う環境主張
  • オフセットに基づく主張(4c):温室効果ガスのオフセットを根拠に、製品が中立・低減・プラスの影響をもたらすと主張すること
  • 法律上の義務の特徴づけ(10a):当該製品区分の全製品に法律で課されている要件を、自社提供の際立った特徴として示すこと

「汎用的な環境主張」は、指令の定義上、サステナビリティ・ラベル上のものではなく、かつ主張の具体的な内容が同じ媒体上で明確かつ目立つ形で示されていないものを指します。前文(recital)では、例として「環境にやさしい」「気候にやさしい」「生分解性」「バイオ由来(biobased)」などが挙げられています。前文は解釈の手がかりであり、条文そのものとは区別されます。

前文では、同じ媒体上で具体的に示せば汎用的な主張にならない例として、「気候にやさしい包装」は汎用的ですが、「この包装の製造に使うエネルギーの100%は再生可能エネルギー由来」は具体的な主張だと説明しています。ただし、具体的な主張でも、不公正取引慣行指令のその他の規定は引き続き適用されます。

本記事の整理として、確認しておきたい点が二つあります。第一に、この指令は消費者向けの商業的な取引慣行を対象にしています。投資家向けの開示資料が同じ規律に入るかは、本記事では判断していません。第二に、EU域内の消費者に訴求する場合は、日本の企業でも対象になりえます。具体的な適用は、販売方法と各国の国内法によります。

この指令の詳しい中身のうち、バイオ由来表示への適用は「バイオ由来」という言葉だけで環境価値があると誤解させるパターンでも扱っています。

グリーンクレーム指令案の現状

EUでは、環境主張に第三者検証を義務づける「グリーンクレーム指令案」も、2023年3月に提案されていました。2025年6月20日に、欧州委員会は撤回の意向を発表し、交渉は止まっています。

欧州経済社会委員会(EESC)の記事は、同日に撤回されたと書いています。2026年10月初旬時点で、正式な手続の状況は、本記事では確認できていません。そのため、「この指令案を前提にした社内ルール」は作らず、上記のECGTと各国法を基準に確認するのが、現時点では無理のない進め方です。

発表前に確認する順番

以下は、上で整理した内容をもとにした、本記事の整理です。法的チェックリストではありません。

1. 主語の範囲を決める

製品全体か、一部の素材・工程か、企業全体か。環境省のガイドラインは「製品のライフサイクル全体を考慮すること」を求め、ECGTは一部の側面を全体であるかのように示すことを禁止リストに入れています。範囲を絞って書けば、裏付けも絞れます。

2. 形容詞を、検証できる事実に置き換える

「環境にやさしい」「バイオ由来」だけで終わらせず、何を測った数字なのかを同じ場所に書きます。たとえばバイオ由来の割合なら、算定方法も示します。認証マークの記事が扱うとおり、認証の種類によって証明する対象は違います。

3. 数字の裏付け資料を、15日で出せる形にしておく

消費者庁が資料の提出を求めた場合(不実証広告規制)、提出は原則15日以内です。試験結果や算定書が社内のどこにあるか、発表前に確認します。LCAの数字を使う場合は、境界や比較対象も説明できる状態にします(LCAの主張の確認ポイント)。

4. 比較の相手を明示する

「○%削減」「従来品より優れる」は、比較対象・基準が書かれていなければ、検証できません。環境省のガイドラインも、比較主張にはLCA評価や数値による適切な裏付けを求めています。

5. ラベル・マークの出どころを確認する

自社独自のマークは、ECGTの「サステナビリティ・ラベル」に当たりうる点を確認します。EUで使う場合は、認証制度に基づくか、公的機関が設けたものかを確認します。

6. オフセットを根拠にした表現を見直す

EU向けの訴求では、オフセットを根拠に「中立」「低減」と製品について主張することが禁止リストに入っています。日本でも、環境省のガイドラインは、カーボン・オフセットの主張に専用の指針を求めています。

7. 訴求する地域の法令を確認する

日本向けは景品表示法とガイドライン、EU向けはECGTと各国の国内法を確認します。ここは法務部門や専門家に相談する段階です。

限界と、確認できていないこと

  • ガイドラインに沿った表示でも、適法性を保証するものではありません
  • 景品表示法の個別の環境表示への当てはめは、本記事では行っていません
  • 各EU加盟国の国内法化の状況と、各国の執行の実際は確認していません
  • グリーンクレーム指令案の正式な手続の状況は、本記事では確認していません(EESCは撤回済みと記しています)
  • 本記事は、第三者認証や認証制度の中身(どの認証が「認められた優れた環境性能」に当たるか)には立ち入っていません

まとめ

発表前の確認では、法令・ガイドライン・実務上の整理を分けて考えます。日本では、景品表示法の優良誤認表示と、環境省の環境表示ガイドライン(令和8年3月改定)が基本です。EUでは、2026年9月27日から適用されるECGTが、汎用的な環境主張、オフセットに基づく主張などを禁止リストに加えました。

実務では、主語の範囲を決め、形容詞を検証できる事実に置き換え、裏付け資料をすぐに出せる状態にしておくことが、共通の出発点になります。個別の判断は、専門家に確認してください。

参照資料

  • 環境省.「環境表示ガイドライン」(令和8年3月改定。日本政府の公式ガイドライン。ページと、本文PDF(guideline.pdf)を確認). env.go.jp
  • 消費者庁.「表示規制の概要(景品表示法)」(優良誤認表示、不実証広告規制の概要。政府の一次情報). caa.go.jp
  • 消費者庁.「表示に関するQ&A」(資料提出期限、合理的な根拠の要件。政府の一次情報). caa.go.jp
  • EUR-Lex.「Directive (EU) 2024/825 of the European Parliament and of the Council of 28 February 2024」(EUの官報。条文・前文・適用日。立法者の文書であり、解釈は各国法と執行に依存). eur-lex.europa.eu
  • 欧州経済社会委員会(EESC).「CURRENT AFFAIRS: Withdrawal of Green Claims Directive」(2025年9月17日付。EU機関による記事。撤回の正式な位置づけは情報源により記述が分かれる). eesc.europa.eu

このテーマの読む順番を見る →