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事例

今週のバイオエコノミー #5|工場は開いた。かかった時間と費用は、当初の見込みを大きく超えた。

ドイツで、木から化学品を作る大型工場が開所しました。投資額は、2020年の発表の約2.5倍です(計画の範囲が同じかは未確認)。米国のSAF工場は、株主による再建の中で資金を確保しました。豪州・ニュージーランドでは、培養鴨肉の原料が承認されました。今週の3つの動きを、確認できたことと、まだ分からないことに分けて紹介します。

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工場の設備と、高さの違う2本の棒、時計を並べた、抽象的なイメージ

「今週のバイオエコノミー」は、世界のバイオエコノミーで実際に動いた変化を、確認できたことと、まだ分からないことに分けて紹介するコーナーです。今週押さえておきたいのは、ドイツの木から化学品を作る工場の開所、米国のSAF工場の資金確保、豪州・ニュージーランドの培養鴨肉の承認の3つです。どれも「作れる」「通った」の先に、時間と費用と手続きが残っている話です。

今週、まず見ておきたい

ドイツで、木から化学品を作る大型工場が開所した

木を、化学品の原料にする。この大型工場が、ドイツのロイナで10月15日に開所式を迎えました。運営するフィンランドのUPMは、年産22万トンの規模で、同種の施設として世界最大だと説明しています。原料は、半径約200km以内の森から出るブナ材です。間伐材と製材所の残りが使われます。酵素で木を分解して、工業用の糖と、リグニン(木を固める成分)を取り出し、リグニンからは特殊な化学品を作ります。

注目したいのは、時間と費用です。UPMは2020年1月に、5.5億ユーロの投資と、2022年末までの稼働開始を発表していました。今回の発表では、総投資額は13.7億ユーロです。当初の約2.5倍にあたります。最初の商業製品(工業用の糖)の生産・販売の開始は、2025年12月です。2022年末としていた当初の開始予定から、約3年後でした(ただし、「開始」の中身は同じとは限りません)。途中の2025年2月には、糖から化学品を作る工程で品質の問題が見つかったとして、開始を2025年後半に延ばし、3.73億ユーロの減損(資産の価値を帳簿上で切り下げること)を計上しています。UPMは、費用の超過と建設の遅れが理由だと説明しています。なお、13.7億ユーロに、計画の範囲の変更が含まれているかどうかは、確認できていません。

では、いま何が動いているのでしょうか。今回の発表は、酵素による分解と、リグニン由来の特殊化学品が「安定運転」に達し、その販売を拡大している、と述べています。一方、確認できた範囲の発表と報道には、当初の計画で主力のひとつだったバイオMEG(ポリエステルの原料)の現状は書かれていませんでした。顧客名や、フル稼働に達する時期も、書かれていません。この発表は、運営する企業自身によるものです。

工場が開くことと、事業として成り立つことは別です。この違いは、工場を建てれば市場はできる?で整理しています。

次に見るのは、バイオMEGを含む主要製品の出荷が始まるか、顧客が公表されるか、そして稼働率がどう上がっていくかです。

まだここ:開所、一部の製品が安定稼働

ほかにも、こんな変化が。

米国のSAF工場LanzaJetが、株主の再建策の中で2,000万ドル以上の資金を確保

LanzaJetは、エタノールからSAF(持続可能な航空燃料)を作る会社です。ジョージア州のFreedom Pines Fuels工場は、年産1,000万ガロンの能力があります。同社は10月15日、「少なくとも2,000万ドルの、全額が確約された新たな資金」を確保したと発表しました。10月14日に最初の払い込みがあり、全額は2026年12月までに完了する見込みです。

ここで押さえたいのは、この資金が「株主と既存の投資家による、再建と債務の圧縮の一部」と説明されている点です。親会社のLanzaTechが、LanzaJetへの持ち分を大きく増やします。同じ発表で、LanzaTechのCEOが暫定のCEOを務め、経営トップが交代することも示されています(再建との因果関係は、書かれていません)。工場は、規格(ASTM)に合うSAFと再生可能ディーゼルを、すでに作った実績があると説明されています。

発表には、資金が融資か出資か、債務がどれだけあるか、販売量や顧客がどうなっているかは、書かれていません。

まだここ:稼働済み、資金面の立て直しはこれから

豪州・ニュージーランドの食品基準機関が、培養鴨肉の原料を承認。販売の時期は未定

食品基準の機関FSANZ(豪州・ニュージーランド食品基準機関)の理事会は、10月6日に、培養した鴨の細胞の原料(バイオマス)を食品の原料として認める申請(A1341)を承認しました。フォアグラやパテのような、ほかの原料と混ぜた食品に使えるとされています。申請したのは、フランスのGourmey(ゴーミー)です。FSANZは、食品の安全性に関する懸念は見つからなかったとしています。承認には、食品の安全、法令の遵守、消費者が選べるようにすることに関する条件がつきます。

ただし、これで売れる状態になったわけではありません。報道によれば、食品大臣会合には60日の間に見直しを要請できる期間があり、変更は官報に載った時点で効力を生じます。販売がいつ始まるかは、示されていません。

先週のEUの食品安全機関の話は、審査に備える提案の段階でした。今週の豪州・ニュージーランドは、審査の結論が出た例です。ただし、結論が出ても、発効と販売の間にはまだ手続きと準備があります。

まだここ:承認の決定、発効と販売はこれから

3つを並べると

ドイツの工場は、開所までに予定より約3年と、当初の約2.5倍の費用がかかりました。米国のSAF工場は、作れることを示したあとで、株主による資金の立て直しが必要になりました。豪州・ニュージーランドの培養鴨肉は、審査の結論は出たものの、発効と販売はこれからです。

今週確認できたのは、工場の開所、規格に合う燃料の生産実績、審査の承認の決定までです。主要製品の出荷、資金の持続性、販売の開始は、まだ先です。「作れる」「通った」ことと、事業として続くことの間には、時間と費用がかかる、という見方で読むと、今週の3つはつながって見えます。

次に見たいのは、UPMのバイオMEGの出荷と顧客の公表、LanzaJetの12月までの資金の完了と債務の状況、FSANZの承認の発効の時期です。

今回確認した主な情報源

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