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資源・循環

日本のSAF供給義務(案)は、誰に、いつから、何を求めるのか——「10%」とは基準になる量が違う

2026年7月、資源エネルギー庁は、ジェット燃料を供給する事業者にSAF(持続可能な航空燃料)の供給を義務づける案を示しました。2030年度の1%から始まり、2032年度から5%です。国際線の給油量が基準で、国内線は当面除外されます。設備投資の高騰による建設の中止・延期は、免除の理由にならない、という条件もあります。案の中身を、確認できる範囲で整理します。

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飛行機と燃料のしずく、段階的に高くなる棒を並べた、抽象的なイメージ

日本は「2030年に、航空会社の燃料の10%をSAFに置き換える」という目標を掲げてきました(SAFはなぜ供給目標を達成できないのか参照)。2026年7月に示された供給義務の案は、1%から始まり、5%までです。ただし、この2つは、割合を計算するときの分母(基準になる量)が違います。2つの関係や、10%の目標が現在どう扱われているかは、今回の資料からは分かりません。誰に義務がかかり、何を基準に数え、達成できないときに何が許されないのか。その中身を、資源エネルギー庁の資料から読みます。

案の骨格——誰に、いつから、何%

資料は、2026年7月23日の「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」(第9回)で、資源エネルギー庁が示した「SAF導入促進に向けた規制的措置(案)について」です。検討の場である「更なるSAF導入促進策検討タスクフォース」の案を報告したものです。決定ではなく、案です。

案の骨格は、次のとおりです。

項目案の内容
義務を負う人国内の空港でジェット燃料を供給する事業者(輸入事業者を含む)。年間3,000キロリットル以上を、対象の空港で国内に供給する事業者に限る
対象の期間2030年度から2034年度の5年間(2035年度以降は、国際的な動向を見て改めて議論)
義務の水準2030年度は1%以上、2031年度は3%以上、2032〜2034年度は5%以上
対象のSAFCORSIA(国際民間航空の炭素オフセット制度)の認証を受けたSAF。国産も輸入も対象。LCAF(低炭素航空燃料)は、現時点では対象外
法的な枠組みエネルギー供給事業者に環境適合利用などを求める「高度化法」(エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律)の枠組み

案の説明には、「諸外国では、ジェット燃料供給量の1〜2%から、2030年代前半に5%前後の供給義務を課している」とあります。日本の案も、小さな水準から始めて、段階的に5%まで上げる設計です。比較表には、EUが2030年に6%、英国が2030年に10.6%(2034年に14.5%)と載っています。

資料は、この仕組みを、石油精製業者にバイオエタノールの利用目標量を課している既存の制度と同じ枠組みだと説明しています。ガソリンのバイオエタノール利用の話は、日本のE10は義務なのか、目標なのかで整理しています。

基準は、国際線の給油量

ここが、「10%」との違いを生むところです。

SAFはなぜ供給目標を達成できないのかで扱った「10%」は、国内の航空会社が使う燃料に対する割合です。一方、今回の案の1〜5%は、燃料を供給する事業者が、国内で供給するジェット燃料に対して、どれだけSAFを混ぜて供給するかという割合です。分母が違うため、数字だけを並べて、「小さくなった」「大きくなった」とは言えません。2つの目標の関係は、今回の資料には書かれていません。数え方には、次の3つの限定があります。

  • 数量ベースです。 資料は、燃料の排出量を何%減らすかではなく、数量で何%のSAFを供給するかが求められる、と注記しています。
  • 国際線が基準です。 案の期間(2030〜2034年度)は、国内線向けの供給量を、基準から除外します。
  • 対象は7つの空港です。 成田、羽田、関西、中部、新千歳、福岡、那覇です。

資料には、2024年度の空港別の給油量が載っています。国際線向けの給油量は、全空港の合計で817万キロリットルでした。国内線は412万キロリットルです。7空港のシェアは、国際線の約99%になります。

この数字から、義務の大きさを試算してみます。2024年度と同じ量が、今後も続くと仮定した、本稿の試算です。

年度義務率国際線向けの試算(万キロリットル)
2030年度1%約8万
2031年度3%約24万
2032〜2034年度5%約40万

国内の設備の規模は、SAFはなぜ供給目標を達成できないのかで整理しています。義務は輸入のSAFでも満たせます(大規模な製造事業者には、次に述べる国産などの条件があります)。国内のプラントの完成だけで決まる数字ではありません。

国産の分と、免除されない条件

案には、供給事業者にとって重い条件が2つあります。

1つ目は、国産の分です。 国内でジェット燃料を製造し、年間10万キロリットル以上を供給する大規模な事業者は、自社のSAF供給量のうち50%を、ジェット燃料の安定供給に資するものにしなければなりません。具体的には、国産のSAFか、海外にある連結子会社が作ったSAFです。資料は、SAFの供給を、エネルギーの安定供給につなげる狙いだと説明しています。

2つ目は、免除されない条件です。 案は、目標を下方修正できる場合を限っています。

目標の下方修正案の扱い
災害など、やむを得ない事由認められる
装置のトラブルで、生産量が減った認められない
航空会社との取引がまとまらなかった認められない
設備投資額の高騰で、SAFプラントの建設を中止・延期した認められない

つまり、設備投資額の高騰などを理由にした、プラントの建設の中止・延期は、理由になりません。災害などのやむを得ない事由は、認められます。初年度の義務率が1%と小さいのも、資料は、SAFプラントの完工リスクを考慮したためと説明しています。

一方で、柔軟な仕組みもあります。目標に届かなかった分は、2033年度まで、翌年度に繰り越せます。国内の他の供給事業者へのSAFの供給量、国内で作って海外の空港での給油用に輸出したSAFの量なども、繰り越された未達分の供給として使えます。

まだ決まっていないこと

読むときの注意が3つあります。

第一に、案であることです。 確認した時点で、官民協議会の議事要旨は「作成中」で、掲載されていませんでした。協議会での議論の結果、案がどう扱われたかは、確認できていません。

第二に、罰則と費用の扱いは、この資料からは分かりません。 罰則は「高度化法に基づいて対応」とだけ書かれています。SAFは従来の燃料より製造費が高く、その差額を誰が負担するかは、供給拡大の焦点です。航空会社や旅客の負担(利用者負担)の仕組みは、同じ協議会の別の資料で扱われている可能性がありますが、本稿では確認していません。

第三に、2035年度以降は、決まっていません。 資料は、2035年度以降の義務を、国際的な動向を見て、改めて議論するとしています。

このため、現時点で言えるのは、次のことです。供給義務の案は、SAFの需要を、制度として確保しようとするものです。ただし、その大きさ、国産の比率、免除の条件は案の段階で、まだ確定していません。

まとめ

  • 日本のSAF供給義務は、案の段階で、2030年度の1%から、2032年度に5%まで上げる設計です。
  • 義務は、燃料の供給事業者にかかります。数量ベースで、国際線の給油量(上位7空港)を基準にします。国内線は、2030〜2034年度は除外されます。
  • 大規模な事業者は、SAF供給量の50%を、国産か、海外の連結子会社産にします。
  • 設備投資額の高騰などによるプラントの建設の中止・延期や、装置のトラブル、取引の不調は、目標を下げる理由になりません。
  • 罰則、費用の負担、2035年度以降は、確認できていません。決定されたかも、確認できていません。

次に確認したいのは、案が告示(正式な決定)に進むか、国産の50%の条件が変わるかです。供給の枠組みは、廃食油はなぜ飛行機の燃料になる?や、バイオ燃料とe-fuel、何が違うかで整理した原料・製法の違いとあわせて読むと、どの原料が義務の達成に使われやすいかが見えてきます。

参照資料

  • 資源エネルギー庁(更なるSAF導入促進策検討タスクフォース事務局).「SAF導入促進に向けた規制的措置(案)について」(2026年7月23日、第9回SAF官民協議会 資料3。義務の対象、年度別の義務率、国産の分の条件、免除の扱い、空港別給油量). mlit.go.jp
  • 国土交通省.「第9回 持続可能な航空燃料(SAF)官民協議会」(配布資料一覧。議事要旨は作成中). mlit.go.jp
  • 国土交通省.「第9回『持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会』を開催します」(2026年7月23日開催の案内). mlit.go.jp

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