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資源・循環

国産材は増えている。ただし2024年に増えたのは燃料用だった——木材需給表と新しい森林・林業基本計画を読む

国産材の供給量は2002年を底に、約2倍まで増えました。2024年の木材需給表では、増えた分を支えたのは燃料材で、建築用材等は減っています。燃料材の中身、因果が言えること・言えないこと、2026年6月に閣議決定された新しい森林・林業基本計画の目標との違いを、林野庁の統計と計画から整理します。

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国産材の用途別の利用量を、2024年の実績と新しい森林・林業基本計画の目標で比べた図

「国産材の供給量が増えている」。林業の明るいニュースとして、よく聞く話です。実際、数字はそのとおりです。ただ、増えた木材が何に使われているかを見ると、印象が少し変わります。林野庁の2024年の木材需給表では、国産材の増加を支えたのは燃料用の木材で、家などの建築に使う用材は減っています。一方、2026年6月に閣議決定された新しい森林・林業基本計画は、今後は建築用の利用を増やすことを目標に掲げています。この記事では、統計と計画の数字を並べて、何が言えて、何が言えないのかを整理します。

長期では、国産材は約2倍に増えた

林野庁の「令和7年度森林・林業白書」によると、国産材の供給量は、2002年の1,692万立方メートルを底に増える傾向で推移してきました。2024年は3,481万立方メートルで、前年より1.4%増えています。

木材全体の自給率は42.5%です。木材の総需要は8,187万立方メートルで、前年より2.5%増えました。自給率は、需要の伸びに国産材の伸びが追いつかず、0.4ポイント下がっています。

白書は、国産材の増加の背景として、森林資源の充実、合板原料としてのスギ等の国産材利用の増加、木質バイオマス発電施設での燃料材利用の増加の3点を挙げています。燃料材だけが増加の理由ではありません。ここから、増えた分の中身を見ていきます。

2024年に増えたのは、燃料材だった

2024年の木材需給表(林野庁、2025年11月21日発表)から、国内で生産された木材の前年比を整理します。

区分前年からの増減増減率
国内生産の合計(3,481万m³)48.6万m³の増加+1.4%
うち用材56.5万m³の減少−2.5%
うち燃料材109万m³の増加+9.7%
うちしいたけ原木3.7万m³の減少−19.4%

国内生産の増加は、燃料材の増加が、用材の減少を上回った結果です。

建築用材等に限ると、国産材の供給量は、前年比1.7%減の1,590万立方メートルでした。木材の自給率も、建築用材等で52.9%と、前年より2.4ポイント下がっています。

燃料材は、国内の消費量が2,259万立方メートル(前年比+11.0%)です。このうち国内生産が1,227万立方メートル、輸入が1,031万立方メートルで、輸入も12.6%増えています。燃料材の国産の比率は54.4%です。

2年前と比べると

1年だけの動きかもしれません。林野庁は2024年9月に、2022年の木材需給表を訂正した「お知らせ」を出しています。その訂正後の数字と、2024年を並べてみます。

2022年(2024年9月の訂正後)2024年差
国内生産の合計3,459万m³3,481万m³約+22万m³
うち燃料材1,024万m³1,227万m³約+203万m³
燃料材以外(用材、しいたけ原木)約2,435万m³約2,254万m³約−181万m³

この表の「燃料材以外」と「差」は、引用した数字からの、bioeconomy.jpによる計算です。2年間で、国産材の合計は約22万立方メートルしか増えていません。燃料材が約203万立方メートル増えた一方で、燃料材以外は約181万立方メートル減りました。

2年間は短い期間で、天候や景気の影響も受けます。ただ、2024年だけの偶然ではなく、同じ向きの動きが続いていることは読み取れます。

「燃料材」には何が含まれるのか

燃料材という言葉は広く、統計によって範囲が違います。

木材需給表の燃料材。 新しい基本計画の表の注は、燃料材を「ペレット、薪、炭、燃料用チップ」としています。林野庁の2022年の訂正のお知らせには、工場の残材や、解体した建物から出た木材から作られたものは、燃料材の外に別の数字(外数)として示すという注がありました。つまり、需給表の燃料材には、それらは含まれていません。

別の調査では、中身が見えます。 林野庁の木質バイオマスエネルギー利用動向調査によると、2024年に燃料などに使われた木材チップの量(絶乾重量)は、次のとおりです。

由来量(万トン)
間伐材・林地残材等545
製材等の残材183
建設資材の廃棄物390
輸入チップ・輸入丸太由来74
合計(原文)1,233(前年比+6.9%)

原文は、4つの区分に「等」を付けており、4つを足した値は合計と一致しません。

木質ペレットは、2024年に国内の製造が12万トン、輸入が516万トンで、合計は529万トン(前年比+34.1%)でした。ペレットは、ほとんどが輸入です。

注意点が2つあります。第一に、木材需給表は体積(立方メートル)、利用動向調査は絶乾重量(トン)で、単位も範囲も違います。両者を直接足したり、割ったりはできません。第二に、需給表の国産の燃料材のうち、どれだけが間伐材や林地残材で、どれだけが他の由来かは、今回確認した資料からは分かりません。

輸入に頼る木質バイオマス発電の問題は、木質バイオマス発電の矛盾で整理しています。この記事で見ているのは、国産材の側です。

建築用材が減ったのは、燃料のせいか

「燃料用の需要が増えたから、建築用の木材が減った」と考えたくなります。しかし、白書も、統計も、この因果を示していません。

資料から言えることと、言えないことを分けます。

言えること。

  • 2024年に、国内の燃料材の生産は増え、用材の生産は減った。
  • 白書は、国産材の増加の背景として、木質バイオマス発電施設での燃料材の利用の増加を挙げている。
  • 白書は、木質ペレットの輸入が急に増えた理由を、FIT・FIP制度を背景に、国内で木質バイオマス発電所の新規稼働が相次いだことと説明している。
  • 新しい基本計画は、課題として、住宅の需要が下がり基調にあることを挙げている。

言えないこと。

  • 燃料用の需要が、建築用の木材を奪ったこと。用材が減った理由の一つは、住宅需要の低下かもしれません。
  • 燃料材と用材が、同じ木を取り合っているか。燃料材の原料のうち、どれだけが建築用材と同じ丸太なのかは、需給表からは分かりません。

なお、白書は別の節で、木質バイオマス発電の急速な進展により燃料材の需要が急激に増え、既存の需要者との競合や、森林資源の持続的な利用への懸念が生じていると記しています。ただし、これは懸念の表明で、需給表の数字から競合を実証したものではありません。つまり、わかるのは「同じ年に起きた」ことで、「競合した」かどうかは別の調査が必要です。資源が競合する構造の例としては、捨てるはずだった油が、新品の油より高くなる——バイオ燃料が起こす資源の奪い合いで、廃食用油の例を取り上げています。

新しい基本計画が掲げる目標

森林・林業基本計画は、おおむね5年ごとに見直されます。2026年6月5日に閣議決定された新しい計画は、国産材の利用量の目標を、用途別に示しています(単位は百万立方メートル。輸出を含む国産材の量です)。計画本文は、この目標を、林業・木材産業の競争力強化や需要の創出が適切に進められた場合に実現可能な量と位置づけています。予測や、実現の確約ではありません。

用途2024年(実績)2030年(令和12年)の目標2035年(令和17年)の目標
建築用材等182326
 製材用材141820
 合板用材456
非建築用材等171717
 パルプ・チップ用材等444
燃料材121313
合計354042

表の「燃料材」は「非建築用材等」の内数で、合計は建築用材等と非建築用材等の和です。この表の見方は、2つあります。

計画が目標に掲げるのは、建築用の増加です。 2024年から2030年の目標の増加分(約500万立方メートル)のすべてを、建築用材等が占めます。燃料材は、12から13へ、ほぼ横ばいです。直近1年の動き(燃料材が増え、建築用材等が減った)とは、向きが違います。ただし、1年分の実績と、2030年の目標を比べているにすぎません。

前の計画の目標とは、距離があります。 林野庁は、前の計画(2021年6月閣議決定)に基づき、建築用材等の国産材の利用量を、令和7(2025)年度までに2,500万立方メートルにする目標を持っていました。2024年の実績は、新しい計画の表では1,800万立方メートルです。白書は、建築用材等の国産材供給量を1,590万立方メートルと書いています。表の定義(供給量と利用量、輸出の含み方)が資料によって違うため、数字は一致しませんが、どちらの数字でも、2,500万立方メートルには届いていません。新しい計画の2030年の目標は2,300万立方メートルで、前の計画の2025年度の目標より小さくなっています。年が違い、定義が同じかは確認できていないため、単純な比較はできません。

総需要のうち国産材が占める割合も、計画の表から計算できます。建築用材等の総需要は、2024年が3,200万立方メートル、2030年が3,400万立方メートル、2035年が3,500万立方メートルの見通しです。国産材の利用量との比は、約56%(2024年)、約68%(2030年)、約74%(2035年)になります。これもbioeconomy.jpによる計算です。

確認したいこと

数字を読むときは、次の点を確認すると、読み違いを減らせます。

  1. どの用途の数字か。 国産材の総量なのか、建築用材等なのか、燃料材なのか。
  2. 供給量か、利用量か。 資料によって、定義と単位が違う。
  3. 燃料材の中身。 間伐材や林地残材か、製材の残材か、建設廃材か、輸入か。
  4. 次の統計。 2025年分の木材需給表が公表されたら、燃料材と建築用材等の動きが、2024年と同じ向きかどうかが、確認の中心になります。

地域の事業者や自治体にとっては、地元の原木が、製材や合板に回るのか、燃料に回るのか。その配分は、地域に残る価値とも関わります。この視点は、地域資源を使うことと、地域に価値が残ることは別問題だで整理しています。建築用材と燃料の使い分けの考え方は、カスケード利用とリサイクルも参考になります。

まとめ

国産材の供給量は、2002年の1,692万立方メートルから、2024年の3,481万立方メートルへ、約2倍に増えました。ただし、2024年は、国内生産の増加(約49万立方メートル)を、燃料材の増加(約109万立方メートル)が支え、用材は約57万立方メートル減っています。2022年と比べても、国産材の合計はほとんど増えず、燃料材が増えた分、燃料材以外が減っています。

白書は、増加の背景に、木質バイオマス発電での燃料材の利用の増加を挙げています。しかし、燃料用の需要が建築用材を押しのけたのかは、資料からは言えません。住宅需要の低下など、別の要因も計画は挙げています。

新しい森林・林業基本計画は、2030年に向けた目標として、増やすのは建築用で、燃料材はほぼ横ばいを掲げています。直近1年の動きとは、向きが違います。次の木材需給表以降で、目標に近づいているかを確認する必要があります。この記事で判断できないのは、燃料用と建築用の競合の程度、目標が実現するかどうかです。

参照資料

  • 林野庁.「令和6年(2024年)木材需給表」の発表(2025年11月21日。総需要、国内生産の前年比、自給率). rinya.maff.go.jp
  • 林野庁.「令和7年度 森林・林業白書」第1部第3章第1節(木材需給の動向). 国産材供給量の推移、燃料材の動向、前の計画の目標. rinya.maff.go.jp
  • 林野庁.「令和7年度 森林・林業白書」第1部第3章第2節(木質バイオマスのエネルギー利用). 燃料材の国産・輸入、チップの由来別、ペレット. rinya.maff.go.jp
  • 林野庁.「『令和4年木材需給表』について」(お知らせ、2024年9月27日。訂正後の2022年の数字と、燃料材の範囲の注). maff.go.jp
  • 林野庁.「森林・林業基本計画~百年つづく『森の国・木の街』へ~」(令和8年6月5日閣議決定。第2表・第3表、用途別の目標). rinya.maff.go.jp
  • 林野庁.「森林・林業基本計画のポイント」(課題と追い風の整理). rinya.maff.go.jp

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