bioeconomy.jp
バイオ素材

植物由来PETの「100%」は、何を指しているのか——試作・マスバランス導入・量産の違い

植物由来原料100%のペットボトルは、2021年に試作に成功しました。2024年には、廃食油由来の原料を使ったペットボトルが、マスバランス方式で商品に導入されました。この2つは別のもので、どちらも「商業量産」とは別の段階です。確認できた一次資料から、段階の違いと、全面切り替えにならない理由の読み方を整理します。

バイオエコノミーの最新の動きは Xでも追っています →

ペットボトルの原料の割合を示すイメージ

「100%植物由来のペットボトル」というニュースを見ると、もう店頭に並んでいるように感じます。しかし、確認できた一次資料で示されているのは、100%植物由来のペットボトルの「試作品の完成」までです。実際に商品に入ったのは、別の原料を使い、マスバランス方式で割り当てたペットボトルです。この記事では、「部分的な植物由来」「100%の試作」「マスバランス方式の商品導入」「商業量産」を分け、全面切り替え(ペットボトルの原料を100%植物由来に置き換えること)が見えない状況を、確認できた範囲で読みます。資料から読める要因を検討するもので、原因を説明し切るものではありません。

PETは、2つの原料でできている

ペットボトルの素材のPET樹脂は、約30%が「モノエチレングリコール」、残りの約70%が「テレフタル酸」(前駆体が「パラキシレン」)でできています。サントリーのニュースリリースは、こう説明しています。

モノエチレングリコール側は、早くから植物由来になりました。サントリーは、原料の30%を植物由来にしたペットボトルを、2013年から「サントリー天然水」に導入しています。原料には、食料のサプライチェーンに影響しない、廃糖蜜(糖を取った後の副産物)由来の素材が使われています。

難しかったのは、残り約70%のテレフタル酸です。ENEOSも2023年8月の発表で、PET樹脂は、約30%を占めるエチレングリコールのバイオ化だけが進み、パラキシレンを原料とする残り約70%のバイオ化に課題があった、と書いています。

「100%」の4つの段階を分ける

ここから、似た言葉が混ざりやすくなります。サントリー等の一次資料にもとづいて、4つに分けます。

1. 部分的な植物由来(30%)。 2013年から商品に導入されています。植物由来なのは、モノエチレングリコールの側です。

2. 100%植物由来の試作(2021年12月)。 サントリーは2021年12月3日、米国のバイオ化学企業アネロテック社と共同で、植物由来原料100%使用のペットボトルの開発に成功し、「試作品が完成した」と発表しました。共同開発は2012年に始まっています。パラキシレンを、熱分解と触媒反応でワンステップで作る技術で、原料は非可食のウッドチップだけです。発表は、今後、早期の実用化を目指す、と書いています。

3. マスバランス方式の商品導入(2024年10月〜)。 資料は、この原料を「バイオマス資源(使用済み食用油)由来」と表現しています。廃食油が植物油だけとは書かれていないため、この記事では、2024年の導入を「バイオマス由来」と呼び、「植物由来」とは区別します。 サントリーは2024年10月28日、使用済み食用油(廃食油)由来のパラキシレンを使ったペットボトルを、一部の商品に11月以降順次導入すると発表しました。量は、飲料用ペットボトル約4,500万本分(280mlと285ml)です。「商品への導入は世界初」とされていますが、これはENEOSと三菱商事が2024年10月28日時点で調べた結果です。

この導入は、マスバランス方式でした。マスバランス方式とは、原料の流れの中でバイオマス原料と他の原料が混ざる場合に、バイオマス原料の投入量に応じて、製品の一部にバイオマス由来という特性を割り当てる方法です(詳しくはマスバランス方式)。物理的に、そのボトルの中身が全部バイオ由来になっているとは限りません。

また、発表の説明は、テレフタル酸(70%)側の経路についてです。発表の図では、このボトルのモノエチレングリコール側は原油由来として示されていて、この側を変えたとは書かれていません。この導入は、「100%植物由来のボトル」とは書かれていません。 なお、マスバランス方式の割り当ては、物理的な70%分の置き換えではなく、帳簿上の割り当てです。

4. 商業量産。 サントリーは、同じ発表で、バイオマス資源由来のペットボトルの量産化に向けて、さらなる体制の構築を目指すと書いています。量産化は、今後の目標として書かれています。2026年10月時点で、100%植物由来のペットボトルの量産を示す資料は、確認できていません。

確認できたことと、確認できないこと

確認できたこと。

  • 2021年12月に、ウッドチップ由来のパラキシレンによる、100%植物由来ペットボトルの試作品ができました(サントリー)。
  • 2023年8月、ENEOSは、使用済み食用油などを原料とするバイオパラキシレンを、水島製油所でマスバランス方式により製造すると発表しました。ENEOSは、これを「商業規模で世界初」と表現しています(ENEOS自身の言葉で、2023年7月末時点の同社の認識です)。バイオマス原料は、NESTEが生産するバイオマスナフサです。この記事は、これを100%植物由来PETの商業量産とは呼びません。マスバランス方式で、前駆体の一つを作る話だからです。
  • 同じ発表には、2023年内にペットボトル約3,500万本に相当する量を製造する、という予定が書かれていました(計画であり、実績の確認はしていません)。
  • 2024年10月に、そのパラキシレンを使ったペットボトルが商品に導入されました。供給網は、三菱商事(全体管理)、NESTE(バイオナフサ製造)、三井化学(中間原料)、ENEOS(バイオパラキシレン)、Indorama Ventures(テレフタル酸とPET樹脂)、岩谷産業(運用管理)、サントリー(ボトル成型と使用)という分業です。

確認できなかったこと。

  • 2021年に試作に成功した、木質由来のルートについて、その後の商業生産設備や、商品への導入を示す資料は、2026年10月の確認時点では見つかりませんでした。
  • 2024年の導入量約4,500万本分が、国内のペットボトル全体や、サントリーのボトル全体に対して、どの程度の割合かは分かりません。国内の指定PETボトルの販売量は、2024年度に約65.2万tですが、4,500万本分の樹脂の重さが資料に書かれていないため、比べられません。
  • バイオパラキシレン由来のPETの価格は、確認できた資料に出ていません。
  • ENEOSは、化石資源由来のパラキシレンの製造と比べて、1トンあたり2.46トンのCO2削減に貢献できる見込みと書いていますが、これはENEOSの試算で、前提つきの数字です。

全面切り替えが見えない状況を、資料からどう読むか

「なぜ全面切り替えにならないのか」を、技術だけで説明することは、確認できた資料からはできません。資料から読めることを、3つ挙げます。次の3つは、bioeconomy.jpの読み方です。

1つ目は、原料の量が、別の産業の動きに連動していることです。 サントリーの発表によると、バイオナフサは、持続可能な航空燃料(SAF)を作る過程で連産品として製造されます。そのため、SAFの製造の拡大に伴って、バイオナフサのサプライチェーンを整える重要性が増す、と書かれています。同じ発表は、ENEOSが2027年以降に稼働を予定しているSAFプラントでの製造と連動して、バイオナフサからペットボトルを作ることを検討している、と述べています(2024年10月時点の予定)。ここから、ペットボトルに回せる量が、SAFの供給の進み方に左右される可能性が読めます。廃食油のような原料は、燃料など他の用途とも取り合いになりえます。ただし、原料が不足している、価格が高いといった記述は、確認した資料にはありません。この論点は、捨てるはずだった油が、新品の油より2倍以上高いや、廃食油はなぜ飛行機の燃料になる?で扱っています。

2つ目は、マスバランス方式の性質です。 割り当ての仕組みは、サプライチェーンの各社が、それぞれの投入量と産出量を管理することで成り立っています。物理的な含有ではなく、帳簿上の割り当てなので、「何を保証しているか」を確認する必要があります。認証の読み方は、バイオ素材の認証マークは何を証明しているのかで整理しています。

3つ目は、再生材という別の道が、数字で示されていることです。 経済産業省・環境省の検討会資料(2026年8月5日)によると、清涼飲料業界は「2030年にボトルtoボトル比率50%以上」を宣言していて、2024年度のボトルtoボトル比率は37.7%、再生PET樹脂の利用量は24.6万tです。サントリー自身の目標は、2030年までに全てのペットボトルを、再生素材または植物由来素材等に100%切り替える、というものです。2023年実績では、国内の清涼飲料事業で、本数ベースで2本に1本以上に、100%リサイクルペットボトルを導入しているとされています(企業の発表)。サントリーの目標も、国の設計認定基準(再生プラスチックまたはバイオマスプラスチック)も、再生材と植物由来を並べた選択肢として書いています。なお、ボトルtoボトルとは、使用済みペットボトルを、再びペットボトルにリサイクルすることです。国の設計認定基準(2026年1月施行)も、再生プラスチックまたはバイオマスプラスチックを年間重量ベースで15%以上使うことを、要求事項の一つにしています。

価格については、同じ資料が、再生PETのペレット価格が2022年度に約20万円/tに上昇したこと(公正取引委員会の調査の引用)と、バージンのPET樹脂が石油価格と連動して動くことを示しています。石油由来のPETに代わる選択肢には、再生材もあることが分かります。

以上を合わせると、確認できた範囲での仮説は、次のとおりです。ボトルネックは、「70%側をどう植物由来にするか」という化学だけにあるとは言えません。資料からは、原料の量がSAFなど別の産業に連動していること、再生材という別の選択肢があること、という要因が読み取れます。マスバランス方式の割り当てをどう受け止めるかも論点になりえますが、これについて確認できた資料に直接の記述はなく、未確認の見立てです。これらは時間とともに移ったと示すものではなく、今後の資料で変わりえます。

見出しを読むときの確認点

「植物由来100%」の見出しを見たときは、次を確認すると、段階を取り違えにくくなります。

  • 100%が、何の割合か(PET樹脂全体か、一部の原料か)。
  • 試作か、商品導入か、量産か。
  • 物理的に含まれているのか、マスバランス方式で割り当てられているのか。
  • 原料は何か(木質、廃食油、糖)。
  • 量は、何本分、何トンか。それが全体のどの程度か。
  • 調達の場面では、どの段階の話か、どの割り当て方式か、どの認証にもとづくか、を供給元に確認する。マスバランス方式の製品は、物理的な含有を前提にできません。

植物由来であることと、生分解性があることも、別の性質です。違いは、「バイオプラスチック」と「生分解性プラスチック」の違いにまとめています。

まとめ

植物由来原料100%のペットボトルは、2021年12月に試作品が完成した段階です。2024年に商品に入ったのは、廃食油由来のバイオパラキシレンを使い、マスバランス方式で割り当てたペットボトルで、約4,500万本分です。発表の図では、モノエチレングリコール側は原油由来として示されています。確認できた範囲では、「100%植物由来のペットボトルが、商業量産されている」と示す資料はありません。

全面切り替えが見えない状況は、技術の一点では読めません。確認できた資料からは、原料の量がSAFの動きと連動する可能性、帳簿上の割り当てという仕組み、再生材という別の道が数字で示されていることが、読み取れます。

次に確認したい点は、木質由来のルートに商業設備が示されるか、ENEOSのSAFプラントが2027年以降に動き出すか、バイオパラキシレン由来のペットボトルの導入量や、価格が公表されるか、です。リサイクルとの関係は、植物由来の原料を使ったペットボトルは、普通のペットボトルと一緒にリサイクルできる?で扱っています。バイオ素材の全体像は、バイオベース素材とは何かにあります。

参照資料

  • サントリーホールディングス・サントリー食品インターナショナル「植物由来原料100%使用ペットボトルの開発に成功」(ニュースリリース No.14037、2021年12月3日。PETの構成、2013年の30%導入、試作品の完成、ウッドチップ由来の記述). suntory.co.jp
  • サントリーグループ「使用済み食用油由来のバイオパラキシレンを使用したペットボトルを世界で初めて商品に導入」(ニュースリリース No.14688、2024年10月28日。マスバランス方式、約4,500万本分、供給網の役割分担、バイオナフサとSAFの関係の記述). suntory.co.jp
  • ENEOS「世界初のバイオパラキシレン製造による“バイオマス to ペットボトル”の取り組みについて」(2023年8月7日。PETの約70%のバイオ化の課題、商業規模でのバイオパラキシレン製造、CO2削減の試算の記述). eneos.co.jp
  • 経済産業省・環境省「指定PETボトルの資源循環に関する検討会」資料3(2026年8月5日。ボトルtoボトル比率、再生PETの価格、設計認定基準、サントリー等の目標の記述). meti.go.jp

このテーマの読む順番を見る →