再造林率は「5〜6割程度」に——数字が動いたのは、分母の推計が変わったからだ
伐採したあとに、木を植え直している割合(再造林率)は、従来の推計では4割前後(本稿の計算)でした。林野庁は2025年12月、伐採面積の推計方法を見直すと、再造林率は5〜6割程度になると説明しました。植えた面積は変わらず、分母の伐採面積の推計が、8〜9万ヘクタールから6〜7万ヘクタールに小さくなったためです。数字の動きと、変わらないことを整理します。
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「木を切っても、植え直されているのは4割ほど」。従来の推計では、そう計算されます(本稿の計算で約35〜39%)。ところが、林野庁は2025年12月の資料で、再造林率は「5〜6割程度」になると説明しました。山で何かが急に変わったのではありません。割り算の分母にあたる、伐採した面積の推計方法を見直した結果です。同じ現実に対して、数字が動いた理由と、それでも変わらないことを、林野庁の資料から整理します。
何が変わったのか
再造林率は、主伐(木をまとめて伐ること)を行った面積に対する、再造林(植え直し)を行った面積の割合です。植えた面積は、資料に「人工造林面積」として載っています。一方、民有林で、どれだけの面積を伐ったかは、直接の数字がなく、推計に頼っています。
林野庁の資料(「再造林の推進」、令和7年12月。審議会に出された資料で、課題と対応方向は案の形です)によると、従来の推計は、木材の生産量(立方メートル)を、森林簿(森林の面積や木の量の台帳)に書かれた1ヘクタールあたりの蓄積(立方メートル)で割って、面積を出していました。新しい方法は、国の森林資源調査(NFI)のデータをもとにした蓄積を使って、推計の精度を上げるものです。この結果、民有林の伐採面積の推計は、8〜9万ヘクタールから、6〜7万ヘクタールに小さくなりました。衛星画像を使った推計でも、同じ傾向だとされています。
資料は、新しい推計の伐採面積を使うと、再造林率は5〜6割程度になり、これまでの推計より高くなる、と説明しています。
資料には、伐採面積の推計方法が3つ並んでいます。
| 方法 | 特徴(資料の記述) |
|---|---|
| 国産材の供給量を、NFIをもとにした蓄積で割り戻す | 基になる国産材の生産量は実数で、安定して推計できる。都道府県別の伐採面積は分からない |
| 衛星画像を使う | 天候の影響を受けやすく、読み取りの精度への影響が大きい。推計の年ごとの変動が大きい。都道府県別の推計には、膨大な手間がかかる |
| 伐採造林の届出などの行政情報を集計する | 推計でなく集計ができ、都道府県別の数字も出せる。ただし、事前の届出のため、複数年の計画や、実施されない計画で、集計値が大きく変わる |
行政情報の方法への移行は、すぐには難しいが、数値の補正方法の整理や、市町村などの体制整備といった課題が解消されれば、移行できる、と資料は書いています。
年ごとの数字で確かめる
資料には、年ごとの伐採面積の推計値と、参考として人工造林面積(植えた面積)が載っています。単位は万ヘクタールです。
| 年度 | 人工造林面積 | 伐採面積(従来の推計) | 伐採面積(NFIをもとにした推計) |
|---|---|---|---|
| 令和元年 | 3.3 | 8.8 | 6.4 |
| 令和2年 | 3.4 | 8.7 | 6.5 |
| 令和3年 | 3.4 | 9.2 | 6.9 |
| 令和4年 | 3.3 | 9.5 | 7.0 |
| 令和5年 | 3.5 | 9.0 | 6.7 |
人工造林面積を、伐採面積で割ってみます(本稿の計算です)。従来の推計では約35〜39%、NFIをもとにした推計では約47〜52%になります。資料は、新しい推計で「5〜6割程度」と説明しており、本稿の概算は、その下限に届かない年(令和4年は約47%)もあります。資料は、再造林率の計算式や、分子に使う面積を示していないため、本稿の概算は、分子の定義が異なる可能性のある参考値です。
さらに、令和7年度の白書(2026年6月)によると、令和6年度の人工造林面積3.5万ヘクタールは、民有林が2.5万ヘクタール、国有林が1.0万ヘクタールの合計です。伐採面積の推計は民有林のものですから、国有林を含む可能性のある数字で割った本稿の概算は、再造林率を、実際より高く見積もっている可能性があります。表の人工造林面積が、民有林だけの数字か、国有林を含むかは、資料の表からは確認できていません。
ここで気づくのは、植えた面積は、3.3〜3.5万ヘクタールで、ほとんど動いていないことです。資料も、人工造林面積は「微増」と書いています。再造林率が上がったように見えるのは、植える量が増えたからではなく、分母の推計が小さくなったからです。
それでも変わらないこと
資料は、再造林率が高めに推計されても、再造林の推進は引き続き不可欠だと書いています。理由は、次の2点です。
- 伐採が、条件の良い森林に集中している。 資料は、九州の例として、市街地や谷沿いの道路に近い、条件の良い森林で、伐採が集中して行われているとしています。こうした森林は、資源の循環利用を図るべき森林で、伐ったあとに確実に植える必要があります。
- 人工林の6割が、51年生以上の利用期に入っている。 このため、今後、主伐が全国的に増える可能性がある、と資料は述べています。
再造林が進みにくい理由について、林野庁の別のページは、木材価格の低迷や造林費用の負担の大きさによる所有者の意欲の減退、育林に従事する人の減少を挙げています。
国産材が増えている中身は、国産材は増えている。ただし2024年に増えたのは燃料用だったで整理しました。伐る量が増えたときに、植える量が追いつくかは、別の問いです。
制度面では、資料は、市町村が「特に効率的な施業が可能な森林の区域」を設定し、その区域の森林経営計画では、植えての更新を必須にする取組を紹介しています。この区域などの設定面積は、令和3年の36万ヘクタールから、令和6年の198万ヘクタールに増えています(特定植栽促進区域などを含む。令和6年は暫定値)。ただし、これは制度上の区域の設定面積で、再造林の実績ではありません。一方で、森林経営計画の認定面積は減少傾向だとして、計画の作成を促すための運用の見直しを検討する、としています。
数字を読むときの注意
- 「4割前後」は、従来の推計に基づく数字です(本稿の計算)。 古い記事や解説に出てくる「4割」は、見直し前の推計の可能性があります。
- 新しい数字も推計です。 伐採面積は、実測ではなく、生産量や蓄積から割り戻した推計です。方法によって、5万ヘクタール台から9万ヘクタール台までの幅があります(令和5年の例)。
- 再造林率の定義と計算式。 資料は、主伐を行った面積に対する再造林を行った面積の割合、と書いています。本稿の表は、人工造林面積を植え直しの面積の代わりに使った概算です。
- 全国の平均です。 地域や所有形態によって、実際の再造林の状況は違います。都道府県別の数字は、現状の推計方法では出せません。
- 最新の年は令和5年です。 令和6年度の人工造林面積は、白書に3.5万ヘクタール(民有林2.5万、国有林1.0万)と載っていますが、伐採面積の推計と再造林率は、確認できた資料に載っていません。
まとめ
- 再造林率は、従来の推計では4割前後(本稿の計算)でしたが、林野庁は、伐採面積の推計方法を見直すと「5〜6割程度」になると説明しています。
- 動いたのは、分母の伐採面積の推計(8〜9万ヘクタール→6〜7万ヘクタール)です。植えた面積は、毎年3.3〜3.5万ヘクタールで、ほとんど変わっていません。
- 条件の良い森林に伐採が集中し、人工林の6割が利用期に入っているため、再造林の推進は引き続き不可欠、と資料は述べています。
- 数字は推計です。方法によって幅があり、都道府県別の把握には、行政情報の活用など、課題が残っています。
次に見たいのは、伐採面積の推計方法のうち、どれが主に使われるようになるかです(資料は、推計精度の向上を検討するとしています)。方法が定まれば、再造林率の経年の比較が、より確かな意味を持つようになります。
参照資料
- 林野庁.「再造林の推進」(令和7年12月、資料1-1。伐採面積の推計方法の見直し、年ごとの推計値と人工造林面積、再造林率、課題と対応方向、効率的施業森林区域の設定面積). rinya.maff.go.jp
- 林野庁.「令和7年度 森林・林業白書」第1部 第1章 第2節(令和6年度の人工造林面積の内訳、再造林が進まない要因). rinya.maff.go.jp
- 林野庁.「再造林の推進」(再造林が進まない要因). rinya.maff.go.jp