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資源・循環

下水汚泥はなぜ建設資材への利用が中心なのか——肥料・エネルギー利用を分ける条件

下水汚泥の約半分は建設資材として使われ、肥料は約14%です。ただし、これを肥料やエネルギー利用の失敗と読む根拠は、確認できません。用途ごとの指標の定義を分けたうえで、用途を分ける条件(需要先、品質、設備、コスト、制度)を整理します。

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下水処理場から出る汚泥と、建設資材・肥料・燃料に分かれる流れのイメージ

下水処理場から出る汚泥の約半分は、建設資材として使われています。肥料は約14%です。この数字を見ると、「肥料やエネルギーの利用は進んでいない」と読みたくなります。しかし、用途ごとに指標の定義も、使う側の条件も違います。国の資料は、建設資材が多い理由を直接は説明していません。この記事では、まず数字の定義を分け、そのうえで、汚泥の行き先を分けている条件を、確認できた国の資料から整理します。

汚泥は、どこへ行っているのか

国土交通省の資料(2025年1月、令和4年度の数字)によると、全国約2000か所の下水処理場から、下水汚泥が年間約235万t発生しています。その利用状況は、次のとおりです。

  • 建設資材(セメント資材等):118万t(50%)
  • 肥料:32.0万t(約14%)
  • 燃料化等:23万t(10%)
  • その他の有効利用:2万t(1%)
  • 未利用:60万t(26%)

この資料は「汚泥量」と表記しています。国土交通省の別の資料では、乾燥した固形分の重さ(乾燥重量)で量を示している例があるため、基準が資料ごとに違う可能性があります。この記事は、各資料の表記のまま引用し、異なる資料の数字を直接比べることは避けます。内訳の割合は四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。

「未利用」の60万tが、何で構成されているのかは、確認できた資料からは分かりません。埋立てなどを含む可能性はありますが、確認していません。

2024年度分は、国土交通省が都道府県別などの数字を公表しています。ただし、全国の内訳の原文を今回は確認できなかったため、この記事では、確認できた令和4年度の数字を使います。年度が違えば、割合は動きます。

似た数字を混ぜない——利用率とエネルギー化率

汚泥の利用を語る数字には、定義の違うものが混ざりやすくなります。

用途別の内訳は、発生した汚泥の量を、何に使ったかで分けたものです。上の表がこれにあたります。

下水汚泥エネルギー化率は、別の指標です。国土交通省の定義では、汚泥に含まれる有機物の量を分母にします。分子は、バイオガスとして使われた有機物、固形燃料として使われた有機物、焼却の廃熱として使われた有機物の合計です。2024年度は約31%でした。汚泥の約8割は有機分(バイオマス)なので、この指標は「有機物のうち、エネルギーに回った割合」を示しています。

つまり、「燃料化等10%」と「エネルギー化率31%」は、分母も分子も違います。さらに、エネルギー化率の分子には、焼却の廃熱の利用なども含まれるため、用途別内訳の分類(建設資材など)と重なる可能性があります。重なるかどうかは、確認できた資料からは分かりません。前者は汚泥全体の量に対する、燃料にした分です。後者は有機物に対する、エネルギーとして使った分で、バイオガスや廃熱利用も含みます。この2つを並べて「エネルギー利用の割合が10%か31%か」と議論することはできません。

建設資材が多い理由は、資料に書かれていない

読んだ資料の範囲で、「建設資材の利用が約半分を占める理由」を直接説明した記述は、見つかりませんでした。確認できたのは、次の事実です。

  • 国土交通省の過去の調査(平成28年度、民間に委託して処分する汚泥のみ。令和4年度の数字とは範囲も年度も違い、比べられません)では、建設資材化が約77万t(乾燥重量)で、最も大きな項目でした。
  • 汚泥の処分を委託する自治体にとって、受け入れ先の分散は課題です。ある自治体は、大口の受け入れ先だったセメント工場が急に閉鎖し、汚泥を運び出せなくなる危機的な状況になった経験から、受け入れ先の管理を強めたと、資料に書かれています。

また、同じ平成28年度の資料は、自治体が直営で行う建設資材化を、「主に焼却灰を土壌改良剤や埋め戻し材へ加工し、公共事業で利用」と説明しています。汚泥が焼却されると灰が残り、その灰が建設資材などに回る、という流れは読み取れます。ただし、なぜセメント資材などの量が大きいのかという機構は、確認できた資料では説明されていません。ここから言えるのは、建設資材(セメント資材等)には、汚泥や灰を引き取る大きな出口があった、ということです。これは、確認できた事実からのbioeconomy.jpの解釈で、国の資料が建設資材の多さの理由として述べているものではありません。

「建設資材が多い」ことを、「肥料やエネルギーが失敗している」と読む根拠は、確認できた資料にはありません。 国は、2015年の下水道法の改正で、発生汚泥が燃料または肥料として再生利用されるよう努めなければならないと定めました。2023年の通知では、肥料利用を優先する考え方が示されています。ただし、これは努力義務や方針であり、建設資材の利用を否定するものではありません。

用途を分ける条件

では、汚泥の行き先は何で分かれるのか。国の資料に書かれた条件を、用途ごとに整理します。

需要先があること。 国土交通省の資料は、肥料も固形燃料も、利用者がいなければ事業が成り立たないと整理しています。肥料化を全量行っていない処理場にその理由を尋ねた調査(回答23件)では、「肥料の需要が少ない」が最も多い回答でした。同じ調査で、肥料化以外の処分方法は、埋立てが最も多く、セメント化が次でした。

品質と安全。 肥料の場合は、重金属が基準値を満たすかどうかが問われます。令和5年度の分析では、77処理場のうち73処理場が基準値以下でした(残る4処理場の内訳は確認していません)。肥料として売る場合は、肥料法に基づく登録などの手続きが必要です(肥料の種類によって手続きは異なり、ここでは詳しく扱いません)。固形燃料の場合は、発熱量や水分の規格(JIS Z7312)があります。たとえばBSF-15という区分は、総発熱量が15MJ/kg以上、全水分が20%以下です。資料は、潜在的な利用者が求める品質に、いまの汚泥の固形燃料が対応できていない可能性があるとも書いています。

含水率と設備。 汚泥は水分が多いため、用途によって、乾燥、炭化、焼却、コンポスト化、メタン発酵といった別の設備が必要になります。肥料化の方法として、コンポスト化、乾燥、炭化、りん回収が検討されます。肥料化に使われる汚泥の内訳では、民間委託によるコンポスト化が最も多く、平成28年度の肥料化全体の約64%でした。

輸送とコスト。 肥料や燃料は、使う場所まで運ぶ必要があります。資料には、埋立て処分が行われる理由として、「処分費が最も安い」「引取先を分散するために含める」などの可能性が挙げられています。りんを取り出す施設は、国の実証事業で整備が進んでいますが、2025年1月時点で7自治体(8処理場)にとどまります。

制度と規模。 国土交通省の資料は、複数の処理場の汚泥を集約する広域化では、規模の利点を生かせるため、エネルギー利用(消化発電など)が望ましいとしています。一方、広域化の対象にならない小規模な処理場や、消化した後の残りは、肥料化が有効と整理しています。つまり、処理場の規模によって、向いている用途が違います。

地域差。 国土交通省は、肥料の利用率や汚泥のリサイクル率を、都道府県別に公表しています。今回、その数値は確認しておらず、地域差の大きさは判断できません。ただし、農地が近いか、セメント工場が近いかといった条件は、地域ごとに違うはずだというのが、bioeconomy.jpの見立てです。

同じ汚泥が、別の出口に向かうこともある

用途は、固定されたものではありません。たとえば、汚泥を焼却した後の灰は、平成28年度の資料では建設資材などに回される流れが示されている一方で、りん酸を平均約27%含むため、肥料の原料にもなります。2023年10月に「菌体りん酸肥料」という公定規格が設けられ、下水汚泥由来の肥料を、他の肥料原料と配合できるようになりました。2024年10月には、国土交通省と農林水産省が、焼却炉を持つ下水道管理者と肥料メーカーの意見交換会を開いています。

北海道岩見沢市の例では、肥料の利用者が足りず、余った汚泥を産業廃棄物として処分していた時期がありました。その後、散布の手間を市が支援し、品質や収量が良くなることが少しずつ広まって、2014年度から発生汚泥の全量が肥料として使われるようになり、年間の処分費を2,400万円減らせたとされています。

これは、用途の配分が、汚泥の性質だけでなく、受け手の側の条件で動く例です。

まとめ

下水汚泥の用途の内訳(令和4年度)は、建設資材が50%、肥料が約14%、燃料化等が10%です。エネルギー化率(2024年度に約31%)は、有機物を分母にした別の指標で、この内訳とは並べられません。建設資材が多いことは、肥料やエネルギーの失敗を意味しません。確認できた資料は、建設資材の多さの理由を説明していません。

用途を分けているのは、需要先の有無、品質と安全の説明、含水率と設備、輸送とコスト、処理場の規模、地域の条件です。そのため、汚泥がどこへ行くかを見るときは、「その用途の受け手が、継続して汚泥を引き取り、使い続けられるか」を確認することが、まず必要になります。大口の受け入れ先が閉鎖した自治体が、受け入れ先の管理を強めた例は、出口を一つに頼らないことの重要性を示しています。

次に確認したい点は、2024年度の全国の内訳が公表資料でどう示されるか、肥料向けの補助(2024年度に創設)で、肥料利用の割合が動くか、そして焼却灰が、建設資材から肥料へ、どの程度向かうかです。

肥料全体の面から、国内資源が輸入原料をどこまで置き換えられるかは、堆肥や下水汚泥は、輸入肥料原料をどこまで置き換えられるのかで扱っています。同じ「ある資源が、なぜ使われないのか」という問いは、「未利用資源」はなぜ使われていないのかでも扱っています。

参照資料

  • 国土交通省 水管理・国土保全局 上下水道企画課「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた取組について」(令和7年1月。令和4年度の汚泥の利用状況、重金属の分析結果、燃焼灰の成分、りん回収の実施状況、公定規格「菌体りん酸肥料」の記述). maff.go.jp
  • 国土交通省「脱炭素化/資源・エネルギー利用」(下水汚泥エネルギー化率の定義と、2024年度の約31%。2015年の下水道法改正の記述). mlit.go.jp
  • 国土交通省「下水汚泥資源の徹底利用に向けた需要確保等の課題整理・方策検討」(平成28年度・29年度の調査にもとづく処分・利用状況、肥料化・固形燃料化の課題、JIS Z7312、岩見沢市の事例、広域化計画との関係). mlit.go.jp
  • 国土交通省「下水汚泥資源の肥料利用」(肥料利用の課題、2023年の通知に関する記述). mlit.go.jp

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