Jブルークレジットは1トン約8万円。どれだけ取引されていて、何を買うことになるのか
藻場などが吸収するCO2を認証するJブルークレジットは、2025年度の公募で平均単価が約8.2万円(税抜)でした。J-クレジット(森林)の年度末の取引価格5,000円の約16倍です(同じ条件の比較ではありません)。一方、取引量は328.5トンにとどまります。認証量・取引量・単価と、GX-ETSに使えるJ-クレジットとの違いを、国土交通省とJBEの資料から整理します。
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藻場や干潟が吸収するCO2を、クレジットにして売る。日本には「Jブルークレジット」という制度があります。2025年度の公募で、1トンあたりの平均単価は約8.2万円(税抜)でした。東京証券取引所で取引されるJ-クレジット(森林)は、2025年度末の価格で5,000円です。単純に比べると約16倍ですが、年間の公募の平均と、年度末の価格という、同じ条件の比較ではありません。なぜこの価格で、買った企業は何を手にするのか。取引の規模と、使える場面の限りを、国土交通省とJBE(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)の資料から確かめます。
仕組み——誰が認証し、誰が買うのか
Jブルークレジットは、藻場や干潟の保全・再生・創出の活動によるCO2吸収量を認証し、売買できるクレジットにする制度です。国土交通大臣が認可した法人であるJBEが、活動する側の申請をもとに吸収量を認証します。活動するのは、漁業者、自治体、民間企業、NPOなどです。
買うのは企業や団体です。国土交通省の資料は、購入の目的を、自社の排出量の埋め合わせ(オフセット)に加えて、CSR(企業の社会的責任)や地域貢献のPRなどだと説明しています。売った側は、その資金で藻場の維持・保全活動を続けます。
国土交通省の資料は、この制度を「ボランタリークレジット」(任意の取り組みで発行されるクレジット)と明記しています。後で触れるとおり、この点が使い道に関わります。
認証量と、取引量
2025年度(令和7年度)の認証量は、JBEの資料から集計すると、52件のプロジェクトで合計3,089.9トン(CO2換算)でした。52件のうち26件は、この年度に初めて認証された新規のプロジェクトです。これまでに認証を受けた場所の数は、87になりました。
認証量の大きさは、プロジェクトによって大きく違います。
| 区分 | 件数・量 |
|---|---|
| 認証されたプロジェクト(2025年度) | 52件、合計3,089.9トン |
| 最大のプロジェクト(長崎県壱岐) | 1,303.2トン(全体の約42%) |
| 上位3件(壱岐、浜名湖、関西国際空港) | 合計2,223.4トン(全体の約72%) |
| 認証量が10トン未満のもの(2026年2月の第3回認証の33件のうち) | 16件 |
このうち、2025年度の公募で譲渡されたのは、国土交通省の資料によると328.5トン、購入した企業等は延べ123者です。平均単価は82,465円/トン(税抜)です。2025年度の第2回公募(JBEの発表)では、10プロジェクトの99.2トンが、のべ67件の申込みで譲渡され、平均単価は81,149円/トンでした。税抜の総額は805万円です。
規模を、国の数字と並べてみます。国土交通省の資料によると、ブルーカーボンのCO2の吸収・固定量は、2024年で32万トンです。地球温暖化対策計画(2025年2月閣議決定)は、これを2035年に100万トン、2040年に200万トンにする目標を置いています。2025年度のJブルークレジットの認証量(約3,090トン)は、2024年の32万トンの約1%です。ただし、この2つは、同じものの数え方ではありません。32万トンは、国全体の吸収量として推計された数字で、認証量は、活動する側が申請して認められた分だけです。認証の対象期間も一様ではなく、複数年の吸収量をまとめて認証したものもあるため、単年度の吸収量とは読めません。
なぜ1トン約8万円なのか
国土交通省の資料は、価格の水準について、「様々な価値が総合的に考慮されている」と書いています。具体的な内訳は、資料には示されていません。
資料から読み取れる範囲で、価格に含まれていそうな価値は、次のとおりです。
- 藻場は、魚介類や海の生き物の産卵・成育の場にもなります。資料は、海洋環境の改善、水産振興、環境学習、地域の活性化にも貢献すると説明しています。
- 買う企業は、CO2を埋め合わせるだけでなく、CSRや地域貢献のPRを通じて、企業価値を高められるとされています。
つまり、1トンの吸収量というより、「その海の活動を支える」ことに対する支払いの色合いがあります。国土交通省の資料にも、クレジットは企業のCSRなどの観点から購入されることが多い、という趣旨の記述があります。ただし、これは資料の説明からの読み取りで、買った企業が価格をどう考えているかは、資料からは分かりません。
一方で、取引量は小さいままです。2025年度の公募の328.5トン、平均単価82,465円から計算すると、取引の総額は約2,700万円です(本稿の概算)。2025年度の第2回公募では、10プロジェクトの合計で805万円でした。この収入が、藻場の維持・保全の費用をどこまで賄えるかは、資料からは分かりません。
GX-ETSに使えるJ-クレジットとは別物
「クレジット」と名前が付いていても、使える場面は同じではありません。国土交通省の資料は、次のように注記しています。
- Jブルークレジットはボランタリークレジットで、2026年に始まるGX-ETS(GX排出量取引制度)の第2フェーズに活用できるJ-クレジットとは異なる。
この注記から読み取れるのは、Jブルークレジットを買っても、排出量取引制度の第2フェーズで使えるクレジットとは扱いが違う、ということです。資料には、排出量取引制度の参加義務のある企業などを、ブルーカーボンの活用を目指す企業の例として挙げた検討が載っています。また、同じ資料は、認証案件が増えることへの対応や、大規模な吸収源としてのブルーカーボンの評価との連携を、今後の検討事項に挙げています。排出量取引制度との連携が検討されているとは、資料には書かれていません。
別のクレジットの読み方は、バイオ炭のJ-クレジットは、何を証明し、何を証明しないのかや、水田の中干し延長のJ-クレジットは、何を認証し、何を保証しないのかで整理しています。「クレジット」の名前だけで、同じ性質のものと決めずに、制度ごとに何を認証し、何に使えるかを分けて見ることが大切です。
まとめ
- Jブルークレジットは、藻場などのCO2吸収量をJBEが認証するボランタリークレジットです。
- 2025年度の認証は52件、合計3,089.9トンで、上位3件が約72%を占めます。国全体のブルーカーボンの吸収量(2024年に32万トン)と比べると、桁が2つ小さい規模です。
- 2025年度の公募で譲渡されたのは328.5トンで、平均単価は約8.2万円/トン(税抜)です。J-クレジット(森林)の約16倍ですが、価格の理由は、資料では「様々な価値が総合的に考慮されている」とあるだけです。
- GX-ETSの第2フェーズに使えるJ-クレジットとは異なります。使い道は、任意のオフセットやPRが中心です。
確認できていないのは、価格の内訳、認証の算定方法の詳細、買った企業の目的です。次に見たいのは、認証量と取引量の伸び、そして排出量取引制度などとの連携が具体的に示されるかどうかです。
参照資料
- 国土交通省 港湾局.「ブルーカーボンの拡大に向けた取組」(令和8年度 第1回 地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会 資料2、2026年8月25日。取引量・平均単価、ボランタリークレジットの注記、2025年度の認証プロジェクト一覧、国の吸収量と目標). mlit.go.jp
- JBE(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合).「令和7年度(2025年度)第2回Jブルークレジット購入申込者公募(総量配分(口数型))公募結果の公表」(2026年6月29日). blueeconomy.jp
- JBE.「令和7年度(2025年度)第3回Jブルークレジット認証・発行について」(2026年2月6日。33件の認証量). blueeconomy.jp
- 国土交通省.「Jブルークレジット制度」(制度の概要、認証・公募の実績の図). mlit.go.jp